育児と浄土のあいだで#1

赤坂めーしょー

「念仏を称える暇もない!」……そんな人にこそ、読んでほしい。

仕事と育児の両立に挑む浄土宗僧侶による、体当たりの連載企画。慌ただしい日常が、浄土の教えによってどう変わるのか。理想と現実の間を右往左往する日々を綴った、リアルな”奮闘記”が始まります。


著者プロフィール

赤坂めーしょー

1990年5月21日生まれ。福島県伊達郡桑折町出身。大正大学大学院(浄土学)修士課程修了。近代浄土宗に興味を持ち、現在は東京の寺院で研究出版業務に従事し、法然上人鑽仰会の編集部にも携わっている。2023年の誕生日に結婚。2024年7月に長男が誕生。2DKのアパートで共働きをしながら、一児の父として、また浄土宗僧侶として、日々「牛歩前進」を続けている。


エピソード1 長男となになに期

私はまだ知らなかった、子供に“なになに期”があることを――。

我が家の長男が1歳10ヶ月になりました。ここ数か月はいわゆる“イヤイヤ期”が始まったところで、可愛らしく「ややよー」「ややうー」と呟いて親の心を惑わせたと思えば、次の瞬間には思い通りにいかないと泣き喚いてしまいます。なかなかしんどい毎日を過ごしています。

とはいえ、この反抗期は世間で有名ですので、ある程度は覚悟していました。しかし、先月から同時並行するようにして、全く予期せぬ第二の波――“なになに期”(第一質問期)が幕を上げました。

それはある時、家にある大好きな車(ミニカー)のおもちゃを指さしながら、

「これなぁに?」

と言いました。「ゴミ収集車だよ」と私が言うと、「しゅうしゅうしゃ!」と楽しそうに返事をしました。

さあ、気づいたらあっという間、最近では妻曰く、凄い時には保育園からの降園の際には「これなぁに?」の大合唱。綺麗に咲いているアジサイの花やよその家の壁、自転車、アリ、石ころにも、何から何まで「これなぁに?」と聞いてくるとのこと。一つずつ答えていると、時間がかかって一向に家には辿り着けません。

時には、大好きなバイクのおもちゃを持って、

「ばいくぅ!」「ばいくぅ!……これなぁに?」

――いや、今自分で言ったじゃん!

またある時は、クレヨンで紙に絵を描くのに熱中していました。黒いクレヨンを握りしめ、紙にぐるぐると激しく線を書き殴ってから、

「これなぁに?」

――うーん、分かんない! アリさん? 石ころ? それとも、ただのぐるぐる?

長男の純粋な目線に対して、私は必死に答えを探していました。しかし、早く答えないとがっかりするかと焦った私は、思わず見たままで「……黒だよ!」と答えました。

物ではなく色で答えて誤魔化しました。降参です。

“なになに期”は親子のコミュニケーションとして大切な時期だと思います。最近では親が言ったことを反復するように言葉を返してくれる姿に、子供の日々の成長を感じます。特にこの前、「バイキンマン!」と言えた時は感動しました。ちなみにアンパンマンは「アンパンチー!」です。

同時に、こんなに小さい頃から目の前の物事に対して純粋な知的関心や疑問を抱き、それを素直に言葉にできることに、ハッとさせられました。

私の経験上、大人になるにつれて物事への知的関心が薄れ、疑問を素直に人に聞くことが少なくなっていくと思います。「別に知らなくても生きていけるし」と言い訳をしたり、「そんなことも知らないのか」と思われる恐怖心がブレーキをかけてしまうからです。

しかし、そもそも宗教も広い意味では「人間は死んだらどうなるの?」という、素朴な疑問から始まっています。もちろん、浄土宗もこの根本的な疑問から逃げるわけにはいきません。これを受けて、私も「阿弥陀さまの極楽浄土は、本当にあるのですか?」と、偉いお坊さんに素直に聞いてみたい衝動に駆られました。

“分からないこと”を恥ずかしがらず、目の前の物事を知ろうとする長男の「これなぁに?」という純粋な心が、今の私には少し羨ましく、そして眩しく映りました。

長男・妻(右の車)・私(左のごみ収集車)の合作です。

この記事を書いた人

赤坂 めーしょー

1990年/福島県伊達郡桑折町生まれ。
大正大学大学院修士課程(浄土学)修了。
福島教区中央組無能寺の弟子。開山は無能上人。
創刊当初の雑誌『浄土』に関心を持つ。
ラーメン好き。ヒラメクカエル。