編集前記(4月号)
「法式に始まり法式に終わる?」
歩き出す時は左足から、仏様をまわる時はいつも右肩側に仏様を仰ぎ見ること、と言った約束事が多いのが僧侶の世界。こうした立ち居振る舞いをはじめ、身の回りのこと、そしてお経の読み方や木魚の叩き方などのことを浄土宗では法式と呼ぶ。浄土宗僧侶になるための最初の一歩ながら、これがなかなか奥が深い。
東京・白金の西光寺
4月号の寺院紀行はその法式の先生のお寺、東京・白金にある西光寺を訪れてもらった。西光寺住職が御忌という浄土宗を開かれた法然上人の年忌法要の唱導師を勤めるからだ。時は4月6日、場所は浄土宗大本山増上寺の大殿。そしてその法要で、増上寺ならでは声明、これを縁山声明というがその奥義中の奥義が披露される。
縁山声明
残念ながらふらりと見に行くことはできないが、25年ぶりに披露される「始段唄」という縁山声明が響き渡る。いわば法式の頂点ともいえる法要だ。さて、この縁山声明、元をただせば京都大原の三千院だが、江戸初期に増上寺に取り入れられ、それが江戸で独自の変化を遂げ、とても個性的なものになっている。そして、そこには当時の増上寺の様子や徳川家との関係も見えてくる。