【2023/7-8月号】村田編集長の『浄土』編集前記【NO.975】


今号のみどころ

【どうする家康は中興の祖】

今年の大河ドラマ、毎週楽しみにしています。さて、主人公の神の君こと徳川家康は浄土宗の中興の祖。中興の祖とは「元気の無くなった組織(家や団体)を再び元気よく盛り上げた人」という意味で、浄土宗では本堂などの伽藍を建てるとその時の住職に中興号が授与されます。家康は本誌前号の寺院紀行に登場した観智国師とともに浄土宗を大いに発展させてくれました。家康は今号にご寄稿いただいた中村康雅貫主の大樹寺で命を救われました。大樹寺さんありがとう、とは浄土宗僧侶の一致する思いでしょう。

【遊行僧、一遍上人の時宗】

ぶつぶつ放談の他宗を知ろうシリーズ、今回から二度にわたり時宗にご登場いただきます。

取材に応じていただけたのは時宗の本山に勤務され、大正大学で教鞭もとられている長澤昌幸先生。滋賀県の大津市長安寺のご住職でもあられます。時宗といえば盆踊りにつながる踊り念仏のイメージが強かったのですが、時宗のお坊さんは踊りませんと聞きびっくり。また無一物で各地を回り、自分のお寺も持たなかった一遍さんには断捨離のイメージが強かったのですが、どうもこれも違うようです。何事も聞いてみないとわからないものです。

【浄土系の宗派の広がり】

時宗の取材を機に法然上人門下の系譜を一覧表(掲載は連載第2回目の9月号予定)にしてみて、今更ながら驚きました。浄土宗が6つに分かれ、そこからさらに浄土真宗、西山浄土宗と広がっていきます。たとえば、真言宗も多くの派に分かれていますが、分派理由は教えそのものの違いではなく作法の違いから。一方、浄土系は教えの解釈、それも瑣末なことでなく本質に関わるような点で分派しています。どうやら、浄土系、法然上人に教えは、いい意味でとても幅広い教えなのかもしれません。

この記事を書いた人

村田洋一

Webサイト「じょーど」&月刊誌「浄土」編集長
令和3年に63歳を迎えた増上寺の塔頭寺院の住職です。
もともとサラリーマンの家庭に生まれ、社会人になってから親戚のお寺を継ぎました。
12年間男性月刊誌の編集部で雑誌作りの仕事をしていました。
退職後お寺に専念しますが、お寺関連の編集や出版に携わり続けています。
高齢者の仲間入りをしても好奇心旺盛なお坊さんです。